ちらかし読みむし

心理療法、社会学、福祉などの領域の読書録、本の紹介など、その他書きたいことを書いています。

2019-01-01から1年間の記事一覧

無知と対話

なぜなら「無知の知」とは、換言すれば、——自分が何事かを知っていると思いこむ以前の状態に、つねに自分を置くことへのたえざる習熟ということである 藤沢令夫『プラトンの哲学』岩波新書(1998)、p.43 自己もまたあなたである 無知への習熟。わたしをあな…

幸いに死ぬるということの確かな信念。7つの習慣とトマス・ア・ケンピス

およそ600年も前の西洋の宗教家、トマス・ア・ケンピスと、現代のかなり名の知れたビジネス書『7つの習慣』の著者、スティーブン・R・コヴィー氏が、よく似たことを述べているのを発見した。 死の間際にそんな風でありたいと願うような具合に、生きていこう…

腑に落ちないことば。「効果性」。

「7つの習慣」とは、スティーブン・R・コヴィー氏の提唱する、人生において「効果性」を高めるための習慣です。 では、そもそも「効果性」とはどのようなことなのでしょう。「効果性」という言葉はわたしにはあまり日本語ではピンときません。日常で効果性と…

あなたが今日死のうとするかのように

ああ、ただ現在のことだけを想い見て、未来のことはあらかじめ用意しない人の心の、なんと愚かに、頑迷なことか。あなたが今日死のうとするかのように、すべての行いや想いにおいて、身を処すべきである。(…)あすは不確かな日である。あなたが明日の日を持…

瞑想日記 背中の塊

夜、瞑想。 夜集中するような瞑想をすると眼がさえて寝られなくなるのでやわらかくぼんやりと全身を感じる瞑想。 せなかのあたりに塊のような感覚。どうやら日中のある出来事を引きずっているらしい。 あれでよかったのだろうか、大丈夫だろうか、と。 <それ…

瞑想日記 かすかな恐れに触れる

今朝は、出発前にふとんであおむけになって瞑想。15分。 仕事にむけて、これから始まる一日、他者と会う恐れのようなものが幽かにあることに気づく。 こどものころ、学校に行くまえ感じていたことと似ている。 小学校1年の頃、2年のちょっとやんちゃな男の子…

瞑想日記 暖房の音に気づきを向ける

ラリー・ローゼンバーグさんの『呼吸による癒し』の「感受」に関する箇所を少し読んでから、瞑想。15分。 数息観の後、随息観へ移行。 今日聞いていた音楽が、頭の中に自動再生する。かすかな音なのではっきりはしないのだけれど、ノイズのようにしつこくリ…

シャレのようなメタファーのような「ごっこ」のような錯綜した日用世界

最も現実的とみなされる日用の代物でさえ、メタファーやある種のシャレや「ごっこ」によって成立しているのではないか、ということを考えてみます。だれもが知っている日常的な語句と戯れていくうちに、そういう結論に至りました。登場人物は、「盗る」「捕…

瞑想日記。とても静かなところ

瞑想日記。 今日は数息観が中心。

このブログについて②

書き始めておよそ8カ月ほど経ちました。始めたのが、2019年4月。 k-kotekote.hatenablog.com ↑当初このブログは「仕事関連の紹介を主に行っていきたい」との趣旨でしたが、続けているとその枠からはみ出ていることに気づき出しました。 あくまで当初の枠内で…

白衣は仕事をしてくれません。

「白衣を着た」ことで、仕事ができると勘違いして一人よがりになっている人が一番困るのです。白衣は仕事をしてくれません。仕事をするのは白衣を着ている人なのです。 菊地かほる『これがMSWの現場です』2014年補訂版、p.26 「白衣」は、社会的役割がその人…

あなた自身が選んだ道を歩くことを促すこと

セラピストの課題は、クライエントの目標に至るためのよい道筋だとセラピストが考える道筋を歩むようクライエントを指示することではなく、クライエント自身が選んだ道をクライエントが歩んでいくのを促すことである。キャンベル・パートン『パーソン・セン…

活きた模範をよく心にとめるがいい

聖なる父たちの活きた模範をよく心にとめるがいい トマス・ア・ケンピス『キリストにならいて』岩波文庫、p.38 だれもが持っていないだろうか。このような人を。 恩師。 恩人。 あるいは、人間の理想とでも呼ぶべき人。 トマスは言う。聖なる父たちの活きた…

ジェンドリンの『プロセスモデル』("A Process Model" )イントロダクションを丁寧に読むシリーズ、まとめ。

ジェンドリンの『プロセスモデル』("A Process Model" Northwestern University Press,2018)イントロダクションを丁寧に読むシリーズ、一応完結したので、まとめ。 k-kotekote.hatenablog.com k-kotekote.hatenablog.com k-kotekote.hatenablog.com k-kote…

ジェンドリン『プロセス・モデル』(Gendlin "A Process Model")イントロダクションを丁寧に読む〈最終〉

前回↓ k-kotekote.hatenablog.com 今回で、イントロダクションは最後となる。 さて、「その全部all that」を伴いやって来る、非特定の豊饒性(unspecified richness)。これは、相互作用を暗に示しているということだった。 非特定の豊饒性=all that=体で…

ジェンドリン『プロセス・モデル』(Gendlin "A Process Model")イントロダクションを丁寧に読む⑦ 非特定の豊饒性

前回の記事↓ k-kotekote.hatenablog.com 単なる音だけonly sounds 非特定の豊饒性 フッサールは言う。「我々が聞くのは、音soundsではない。我々が聞くのは、バイクであり、ドアがバタンと閉まることである」。我々が聞いているのは「単なる音だけ」ではない…

ジェンドリン『プロセス・モデル』(Gendlin "A Process Model")イントロダクションを丁寧に読む⑥ 対象と状況

↓前回 k-kotekote.hatenablog.com 引き続き、Gendlinの"A Process Model"を読む。 対象object。 対象が伴って(involve)いるのはわたしがそこにいるところの状況 第Ⅲ章になってようやく、我々がそれと共に生きている対象というものが実際に伴っている(invo…

ジェンドリン『プロセス・モデル』(Gendlin "A Process Model")イントロダクションを丁寧に読む⑤

前回記事↓ k-kotekote.hatenablog.com 引き続き、 『プロセスモデル』(Gendlin "A Process Model")のイントロダクションを読んでいく。 前回読んだところは、第Ⅰ章で何が説かれているかの説明だった。ボディと環境は一つのプロセスであり、互いに互いを暗…

ジェンドリン『プロセス・モデル』(Gendlin "A Process Model")イントロダクションを丁寧に読む④ ボディと環境はひとつ

前回記事↓ k-kotekote.hatenablog.com 引き続き、 ジェンドリン(Gendlin)のプロセスモデル(A Process Model)のイントロダクションだけは丁寧に読む。 第Ⅰ章は、次のように始まる。「ボディと環境はひとつである」と——この言明は、この本を通して漸進的に展…

ジェンドリン『プロセス・モデル』(Gendlin "A Process Model")イントロダクションを丁寧に読む③ 暗なる示しの中への生起

k-kotekote.hatenablog.com ジェンドリン(Gendlin)のプロセスモデル(A Process Model)を読んでいる。まず前回までのところを思い出そう。 … 知覚(はっきり何かにきづいて、わかること)以前に、私たちは周りのものたちとすでに相互に作用しあっている。 …

ジェンドリン『プロセス・モデル』(Gendlin "A Process Model")イントロダクションを丁寧に読む② 極めて大きな拡張

↓前回記事。ジェンドリン『プロセス・モデル』(Gendlin "A Process Model")イントロダクションを丁寧に読む① k-kotekote.hatenablog.com ジェンドリンのプロセスモデルのイントロダクションを丁寧に読んでいる。今日も続きを読もう。しかしその前に、前回…

ジェンドリン『プロセス・モデル』(Gendlin "A Process Model")イントロダクションを丁寧に読む① わたしたちはタンポポのように世界と触れ合う。

ジェンドリン『プロセス・モデル』(Gendlin "A Process Model")イントロダクションを丁寧に読む。

ソーシャルワーカーとは? ソーシャルワークとは?② 「ソーシャル」ってどういうこと 

前回、ソーシャルワーカーとは「生活に困っている人の援助をする人」と説明してみました。 k-kotekote.hatenablog.com おおまかなイメージを伝えることを優先してしまったので、説明が及んでいないこともまだまだたくさんあります。 そこで今回は、 ソーシャ…

ソーシャルワーカーとは? ソーシャルワークとは? こどもに伝えられるような言葉で説明を試みる

ソーシャルワーカーとは何なのでしょうか。医師や看護師などと比べると、あまり知名度も高くない職種だと思いますが、子どもにもわかる説明を試みます。

今日の面接から学んだこと。覚え書き。

わたしは、就労支援事業所にソーシャルワーカーとして務めている。 通所を開始してから、しばらくたつ、とある利用者さんに、声をかけた。「通所を始めてしばらくたつので通ってみてどうか、インタビューしたいのだけれど、時間を作っていただけないだろうか…

「別の生き方」ができる社会。松本卓也『心の病気ってなんだろう?』読後メモ 

松本卓也さんの『心の病気ってなんだろう?』読後メモです。 職場の同僚にも勧めたくなる、すばらしい本でした。 心の病気の回復について考えるということは、僕たちの社会のあり方を変えることを考えることでもあるのです。心の病気の人たちが回復しやすい…

伊藤周平『社会保障入門』読書メモ

いま、日本では、社会保障費の抑制・削減(社会保障削減と総称)が進められ、国民生活がますます苦しくなり、将来への不安が増大しているpp.12-13 かつて「大砲か、バターか」と称されたように、防衛費の増大を進める政権は、必ず社会保障を削減してきた。安…

インスーと東洋の伝統。わたしは他者を変えようとしないでいられるか。

ソリューション・フォーカスト・アプローチを生みだしたBFTC(短期家族療法センター)の実践における発見として、「クライアントを変えようと考えない」という逆説が存在するようです。これは、老子の「我れ無為にして民自ら化す」に重なる部分と言えるかも…

「仕事」を自らの言葉で定義する。村山昇さん『働き方の哲学』を参考に

「仕事」を自らの言葉で定義する。村山昇さん『働き方の哲学』を参考に

受容・弱さ・悪③

悪。河合隼雄『子どもと悪』