今日の面接から学んだこと。覚え書き。
わたしは、就労支援事業所にソーシャルワーカーとして務めている。
通所を開始してから、しばらくたつ、とある利用者さんに、声をかけた。
「通所を始めてしばらくたつので通ってみてどうか、インタビューしたいのだけれど、時間を作っていただけないだろうか」と。
本当は、新しい個別支援計画を作成する上でのアセスメントも兼ねた面接にしようかと思っていたが、語りがあまりに生き生きしていたので、そういった意図は完全に忘れて、クライエントの話に耳を傾けた。
ふだんは、あまり表情に動きが乏しく(薬の副作用だろうか?)静かな方だっただけに、こちらの言葉かけに対して、身振り手振りも交え、笑顔で応答してくれた瞬間が、印象として残っている。今日の面接は、とてもよかった。
以下、覚えておきたいことをメモ書きしておく。
会話のプロセスにあるクライエントの表情をモニターすること
重要なのは、クライエントの生き生きとしたいい表情が見れたこと。
わたしが、その面接を楽しいと感じることは、それはそれでよいのだけれど、それだけでは独りよがりになってしまう。
クライエントにとって、その面接が有益であるかどうか。そのメルクマールの一つは、面接を通していい表情になるかどうか、が挙げられると思う。クライエントが良い表情になるような会話ができるかどうか、ということが重要だ。
重要なのは、
1、お世辞やうわべのことばで、笑っているということではなく、真摯なことばのやり取りの中で、良い表情が生まれるということ。
2、その面接の質をリアルタイムでモニターする上でも、自らが参与する関わりのプロセスにあるクライエントの表情に気を配っておくこと。
面接をどのように評価するか、の最も直接的な指標は、クライエントの表情であるかもしれない(迷っていた表情がほっと穏やかになる、無表情だったのが笑顔になる、など)。
解決志向アプローチの観点は「困りごとの相談」でなくとも役に立つこと。それから「敬意」について
ふだん、主として解決志向アプローチの観点からクライエントに問いかけたり、応答することが多い。解決志向の理論や技術は、とても実践的で役に立つ(学びたい方は、下記にリンクをはってある『解決のための面接技法』がおすすめです)。
今日は、クライエントの方から何か困ったことの相談事があるわけではなく、こちらのほうから声をかけて、最近の様子や事業所を利用してからの生活の様子を聞いたわけなので、クライエントのもつリソース(資源)を中心に話をし、クライエントの関心事に関しては少し先の未来のイメージをほんわりと聞かせていただいたうえで、コンプリメントで面接をしめくくった。クライエントにとって重要な他者の観点を問う、関係性の質問を使って、クライエントのリソースを探求するという過程が、わたしたちの会話を豊かにした。また、今日は、近々興味が増してきた、ナラティヴ・セラピーの学びも少し色が出ていた部分もあったように思う。
「外在化をはじめ、ナラティヴ・セラピーの会話のプロセスを実践するならば、おのずとクライエントに敬意を払うかたちになっていく」
坂本真佐哉『今日から始まるナラティヴ・セラピー』p.168
たぶん、これは真実なのだと思う。
今日のような面接ができるということは、支援者にとってもある種の「ごほうび」のようなもので、語られるクライエントの力やその生きざまに感動させてもらえるということは、支援者の心の中に、クライエントへの敬意が育まれるだけではない。クライエントによって、支援者が元気を与えられる(エンパワーされる)と言ってもよい。
ブトュリムが述べるように、クライエントが支援者に与えてくれる「贈物gift」は「援助する」という役割そのものであるということを実感する。