ちらかし読みむし

心理療法、社会学、福祉などの領域の読書録、本の紹介など、その他書きたいことを書いています。

【内容紹介】パパラギ はじめて文明を見た南海の酋長ツイアビの演説集

『パパラギ』の内容紹介。わたしたちの当たり前に生きている日常を、別の角度から見直してみたい人。現代と言う社会を相対化してみたい人。そういう方は読んでみるといいかもしれません。

【本の紹介】『治療的面接の工夫と手順 人間学的力動論の立場から』増井武士、池見陽

治療的面接の工夫と手順: 人間学的力動論の観点から 心理療法家の、増井武士先生と池見陽先生の対談本。 対談と言っても、増井先生の聞き役を、池見先生がしているという感じで、どちらかというと、増井先生が主で話しておられる。わたしは、池見先生の本は…

【本の紹介】『コロナ後の世界を生きる――私たちの提言』村上陽一郎編

『コロナ後の世界を生きる――私たちの提言』の紹介。特に、コロナというあらたなウィルスに関連して、人間と自然・動物との関係性について再考を促すものとして、「センザンコウ」を取り上げた、石井美保さんの論考について、詳しく紹介しています。

「バザーリア講演録」一章 精神医療は自由の道具か、抑圧の道具か

フランコ・バザーリアの講演録『自由こそ治療だ!』を読んでいます。前から気になっていた本だったのですが、ようやく手にとることができました。はじまってばかり、一章からかなり激烈で、読んでいて不穏な気持ちになります。一章のタイトル自体が、「精神…

不可視に偏在する権力の社会的必要性と抑圧性『フーコー 主体という夢:生の権力』読書メモ

貫成人『フーコー 主体という夢:生の権力』読了。 読書メモ。 「権力」とは何か。王様や殿様、会社の社長など特定の人物だけが振るうものではない。「権力」は不可視に人々の間に偏在する。人々が、マスクをしているか互いに監視し合うところに権力はある。…

竹端寛さん、沼田和也さんのドキッとする言葉。精神障害と社会

竹端寛氏の文章に「エリー湖」の比喩というものが登場する(『脱・いい子のソーシャルワーク』の6章「精神障害と抑圧・反抑圧」)。 元ネタは、ベイトソンの『精神の生態学』にあるというが、アメリカ五大湖の一つエリー湖は、家庭や工場から排出される汚水…

臨床を続ける一握りの勇気。『誰がために医師はいる――クスリとヒトの現代論』松本俊彦先生の新著を読んで

『誰がために医師はいる――クスリとヒトの現代論』松本俊彦先生の新著の感想と覚え書き。

主体の対象化×コロナ

『ナラティヴ・セラピストになる』を読んでいる。前回途中で挫折したものの再チャレンジ。「ナラティヴ」は「ナラティヴ」という一見親しみやすげなおもて向きと裏腹に背景理論は結構複雑で難しい。 この本で登場するミシェル・フーコーの「主体の対象化」の…

クレしんの野原家。大企業型の家族

野原ひろし、「ハイスペック」 野原ひろしが「ハイスペック」というツイートがタイムラインに流れてきた。 ・35歳、年収600万円・専業主婦と5歳、0歳の二児を扶養・東京日本橋の商社勤務・都心まで通勤圏内に庭付き一戸建て保有・自家用車保有・浮気の心配ゼ…

人を手段化しない経済。影山知明さん『ゆっくり、いそげ』読後メモと紹介

影山知明さん『ゆっくり、いそげ』(大和書房)を読んだ。副題である"カフェからはじめる人を手段化しない経済"というタイトルに惹かれて。 著者は、「クルミドコーヒー」(西国分寺)店主の影山知明さん。作中で描かれているように、丁寧にいれられたコーヒ…

坂爪真吾さん『性風俗シングルマザー 地方都市における女性と子どもの貧困』読書メモ

坂爪真吾さん『性風俗シングルマザー 地方都市における女性と子どもの貧困』備忘録。

野坂祐子『トラウマインフォームドケア "問題行動"を捉えなおす援助の視点』読後メモ

野坂祐子さん『トラウマインフォームドケア "問題行動"を捉えなおす援助の視点』を読了した。 野坂祐子さんの『トラウマインフォームドケア』を読んでいる。野坂さんの歯切れの良い明快な素晴らしい文章と、リアリティーに富んだ事例の描写。これは支援者も…

無知と対話

なぜなら「無知の知」とは、換言すれば、——自分が何事かを知っていると思いこむ以前の状態に、つねに自分を置くことへのたえざる習熟ということである 藤沢令夫『プラトンの哲学』岩波新書(1998)、p.43 自己もまたあなたである 無知への習熟。わたしをあな…

幸いに死ぬるということの確かな信念。7つの習慣とトマス・ア・ケンピス

およそ600年も前の西洋の宗教家、トマス・ア・ケンピスと、現代のかなり名の知れたビジネス書『7つの習慣』の著者、スティーブン・R・コヴィー氏が、よく似たことを述べているのを発見した。 死の間際にそんな風でありたいと願うような具合に、生きていこう…

白衣は仕事をしてくれません。

「白衣を着た」ことで、仕事ができると勘違いして一人よがりになっている人が一番困るのです。白衣は仕事をしてくれません。仕事をするのは白衣を着ている人なのです。 菊地かほる『これがMSWの現場です』2014年補訂版、p.26 「白衣」は、社会的役割がその人…

「別の生き方」ができる社会。松本卓也『心の病気ってなんだろう?』読後メモ 

松本卓也さんの『心の病気ってなんだろう?』読後メモです。 職場の同僚にも勧めたくなる、すばらしい本でした。 心の病気の回復について考えるということは、僕たちの社会のあり方を変えることを考えることでもあるのです。心の病気の人たちが回復しやすい…

伊藤周平『社会保障入門』読書メモ

いま、日本では、社会保障費の抑制・削減(社会保障削減と総称)が進められ、国民生活がますます苦しくなり、将来への不安が増大しているpp.12-13 かつて「大砲か、バターか」と称されたように、防衛費の増大を進める政権は、必ず社会保障を削減してきた。安…

プラグマティックな方法 ジェイムズ『プラグマティズム』

W.ジェイムズの『プラグマティズム』。その方法論の活用について。