ちらかし読みむし

心理療法、社会学、福祉などの領域の読書録、本の紹介など、その他書きたいことを書いています。

令和3年11月1日 生活の中の詩情

今日も、ばたばたと過ぎていきました。
午前、とあるクライエントさんから聞かせていただいた生活歴を記録にまとめていると、受診希望の方がお見えになる。来談の経緯を聞かせていただき、医師や外来のナースに伝え、予約の段取りを整え、記録にまとめ…とやっていると、あっという間に、お昼になりました。

 

昼からは病棟に行き、入院している方のお話を聞かせていただく。話しぶりに、ためらいと恐れ、自信のなさのような何かを感じ取りながら、この方が望んでおられることは何だろう、どうすればそれを居心地よく語っていただけるだろうと考えつつ(というより正確には、そのことに想いを傾けつつ)、その方との間合いや、応答の在り方を模索していたように思います。そうこうしていると、あっという間に外勤の時間。役所へ出かけ、手続きを済ませ、戻ると、もう日は傾いています。行きは、今にもぽつぽつと雨がふりそうな、灰色の空でしたけれど、帰りは日の衰えた空に、淡い青が透けているのが見えました。

 

生活の中の詩情というものは、本来万人に与えられているはずのものですが、それを十分に感受し得ているか。「自分の感受性くらい自分で守れ…」というように、感受性はケア可能な一種の力能であると、私は思います。夕闇の帰り道、橋の欄干にかかる真っ赤なツタは、たしかに詩の切片であり得ますが、その闇に浮かびあがる艶やかな色彩に気づき、今日一日かけまわってくたびれ果てたわたしに対する、ささやかなギフトであると思えるかどうか。そのようなギフトにあふれていることに、ほんとうは感謝すべきなのでしょう。