援助論アンソロジー② いる、居続ける、居合わせる、共にいる、ほんとうに存在している
- だれかがそこにいないと
- 期待を失わずに傍らにい続ける
- あるがままの人間として、まさその瞬間にその場に居合わせること
- 別の人間と共にいる人間であること
- 飢えて凍えている他人が自身と同じようにほんとうに存在していると知ること
だれかがそこにいないと
一般の人が考えるように僕が「救った」というのは一つもないわけです。(…)向こうが立ち直るんです。ただ、それほど立ち直るんなら、僕の所へ来ずに立ち直ったらいいように思うけれども、立ち直るには、実際だれかがそこにいないと立ち直れないところがある。河合隼雄『河合隼雄のカウンセリング入門』p.59
期待を失わずに傍らにい続ける
見守るということをもう少し詳しくいいかえてみると、その人にできるだけの自由を許し、常に期待を失わずに傍らにい続けることだと言えるだろう。(…)期待をもち続けるためには、人間の可能性を信頼することを学ばねばならない。河合隼雄『大人になることのむずかしさ』p.123
あるがままの人間として、まさその瞬間にその場に居合わせること
対人援助において最もシンプルでありながら、人によっては最も難しいポイント、それが応答性です。安全に話を聞いてもらい、また応答してもらえるよう保証してあげることが何より大切です。まことに単純なことですが、そのためにはセラピストや教師、ソーシャルワーカー、つまり対人援助を仕事にする人は誰であれ、「専門職として」だけではなく、あるがままの人間として、まさにその瞬間にその場に居合わせることが求められるのです。
セイックラ、アーンキル『開かれた対話と未来』p.191
別の人間と共にいる人間であること
私が言わなければならない、最も大切なことから始めよう。
すなわち、人とワークすることの本質は、
生きている存在として
そこにいること(to be present)です。
そしてこれは幸運なことです、なぜなら、
もしも私たちが頭がいいとか、善良であるとか、
成熟しているとか、賢明でなければならないのなら、
私たちは、おそらく困ってしまうでしょう。
しかし重要なのはそれらではありません。
重要なことは
別の人間と共にいる人間であること。
相手をそこにいる別の人間として認識すること。
たとえそれが猫や鳥であっても、
もしも、あなたが傷ついた鳥を助けようとしているのなら
知っておかなくてはならない最初のことは、
そこに誰かがいるということ。
ジェンドリン『セラピープロセスの小さな一歩』p.28
飢えて凍えている他人が自身と同じようにほんとうに存在していると知ること
詩人は実在的なものに注意をそそいで美を生み出す。愛の行為も同じである。飢えて凍えている他人が自身と同じようにほんとうに存在していると知ること。これで十分なのだ。その後におのずと行動がつづく。