ちらかし読みむし

心理療法、社会学、福祉などの領域の読書録、本の紹介など、その他書きたいことを書いています。

バーンアウトから自分を助けるために役に立つかもしれないこと

この記事を書いている今日は、令和4日目、大型連休の真っただ中です。
ゆっくりお休みできている方も、世間は連休にかかわらず普段通りお仕事されている方もいらっしゃるでしょうか。

わたしは、連休を有難く享受しており、普段と違う気分の楽さを感じています。すごく楽。解放感。ふだん、結構仕事でストレスかかっているのかな…と思いつつ(そして次回出勤の心配をおぼろげにしている)。

ストレスは大なり小なりあるもので、ひとそれぞれ、ストレスの対処の方法を、持って使っているはずです。意識的に使うこともあれば、あまり意識せずに行っていることもあるかもしれません。

さて今日は、より意識的に自分自身のストレスについて振り返り、対策を講ずる上で役に立ちそうな、「バーンアウト(燃えつき)」の考え方について、まとめてみます。
 Q1.燃えつきの「症状=要注意サイン」にはどのようなものがあるでしょうか。
 Q2.どんな人が燃えつきになりやすいのでしょうか。
 Q3.どのように燃えつきに対処すればよいのでしょうか。

内容は主に、『ジェネラリスト・ソーシャルワーク*1(pp.236-237)を参照しています。わたしは援助職(ソーシャルワーカー)ですが、それ以外の職業にも当てはまる一般的な内容ではないかと思われます。

バーンアウトとは

バーンアウト」は日本語では「燃えつき」です。「燃えつき症候群」という言葉も存在し、検索するとこれらについての一般的な情報がヒットします。

これは、自分が所属している「機関システムの中(注:職場)でのストレスの症状である場合が多い」とされます。(「場合が多い」というのは、家庭で子どもが生まれ夜泣きがひどくて眠れないといった、職場以外の要因が関連することもあるからだと思われます)その結果、「前向きな感情」「共感」「敬意」が失われるといいます。

前向きな感情…「よしやろう」「いい仕事をしよう」「今日は○○が出来た!」「楽しい!」「面白い!」といった気持ち
共感敬意…お客さん(援助職であれば患者さん、クライエント)や同僚などに対して、相手の話に耳を傾け理解し思いやること、尊重すること

こういった状態で仕事をするのは、とくに他者との関係性の質を重視する援助職などでは、仕事のパフォーマンスにとって致命的なものになりそうです。そして、その状態で仕事をすること自体が自分自身にとっても苦痛なものとなってしまいます。ですから、「自分の機能遂行やバーンナウトの症状に敏感でなければならない」。では、バーンアウトの症状として、どのようなものがあるのでしょうか。症状とは「要注意サイン」のことですね。

バーンアウトの症状=要注意信号

以下が、「症状=要注意信号」です。風邪で熱が出たとき、せき・鼻水・熱といった症状は、休養を促す「要注意信号」であるように、以下のような症状が該当する場合は、自分自身へのケアを促すサインであるかもしれません。本では、一般的な項目として、6つが紹介されていました。具体例は、わたしの思いつきです。

1.尊重されていないという感情

これは例えば、
「無視されている気がする」「話を聞いてもらえない」
「必要とされていない」
「あつかいが適当な気がする」「わたしだけ輪に入れていない気がする」
「馬鹿にされている」「軽視されている」「下に見られている」
「陰でわたしの不満が言われている気がして怖い」
などでしょうか。

2.笑う力の喪失

例として思いつくもの
・自分から冗談が言えなくなる。あらゆる応答が機械的になってくる。
・周りの人(利用者さんや同僚)が冗談で笑っていても、わたしは笑えない。
・笑えない。けど顔だけ頑張って笑おうとする。
・笑えない。かつ周りの人が笑っているのを見るといらいらする。
・笑えない。普段なら笑える自分への「いじり」も、真に受けて傷つく。馬鹿にするなよ。腹が立つ。

3.病気


・頭痛。夕方になると頭がガンガンする。
・腰が痛くなる。
・お腹が痛くなる。
・すぐ風邪をひく。

4.疲労


・すぐ疲れる
・なんかだるい
・なんか体が重い
・朝起きて疲れる
・着替えて疲れる
・歯磨いて疲れる
・ため息多し
・疲れた、が口癖
・とにかく、なんかいつも疲れた感じがする

5.出勤恐怖症


・会社に行くのが怖い
・休みが明けるのが不安

6.睡眠困難


・夜、寝れない。
・寝てもすぐ目が覚める
・明け方なんども目が覚める
・寝ても疲れがとれた感じがしない

以上、実例を思いつくままに並べていったのですが、思ったよりたくさん思いついてしまい、じぶんやばい(ときが結構おおい)んじゃないか、という気がしてきました笑 (ここにあるようなこと経験しないで仕事できる人がいたらすごい)

日常、多かれ少なかれ、これらのことを経験しながら生活している中で、その程度が大きくなっているかどうかを、自分自身をモニターしていることが重要に思われます。もっとも、本当に調子が悪いときは、調子の悪さも自覚できないものですが。

燃え尽きやすい人

さて、燃えつきやすい人というのもいるそうです。

1.長時間非常に集中して頑張りすぎる傾向がある人

「彼らは若く、仕事に対して情熱的な場合が多い」らしい。

2.プライベートな生活で満たせていないものを、仕事の上で満たそうとしている人

例.
・家族には感謝を求めても得られないので、仕事の人間関係で感謝されるように頑張る。
・友達がいなくて話し相手がいないので、クライエントの話を聴いていると満たされる。
・家に居場所がないので、会社での同僚との関係が居場所
などでしょうか。

 

3.目的を達成できないと感じていたり、自分の行動がコントロールできていないと感じる人

例.
・今日中に、関係機関に電話を3本入れて連絡調整しておきたかったのに、1本しか入れれなかった…
・机の上かたずけなきゃとずっと思っているのに、できない
・だれそれさんに頼まれた調べもの、早く調べとかなきゃならないのに、ぜんぜんできてない、やばい…

ではどのように対処するか?

以上、バーンアウトの症状やなりやすい人の特徴について見てきました。では、どのように対処していけばよいのでしょうか。本をまとめると、次の4点です。

1、現状を認識する
2、これまで軽視してきた個人的ニーズに注目する
3、休養、運動、健康的な食事など自分をいたわる養生をする
4、個人的ニーズを満たすのに助けとなる個人的資源のネットワークを作る

詳しく見ていきましょう。

1.現状を認識する

「最近意外と、ストレスかかってないかな…?」「バーンアウトぎみじゃないかな…?」
など、自分にきいてみましょう。上述の「要注意信号」に照らし合わせて該当するものがないかチェックしてみてもいいかもしれません。

なお、浦川の「べてるの家」では、精神障害を経験する当事者の実践知として「なつひさお」が活用されていると聞きます(向谷地生良先生の『技法以前』『精神障害と教会』参照)。「なつひさお」を使うと自分の状態を簡単にチェックできます。


 な なやんでないかな
 つ つかれてないかな
 ひ ひまじゃないかな
 さ さびしくないかな
 お おなかすいてないかな、おくすり・おかねにこまってないかな

また、普段から、ストレス状況時の自分にありがちな「注意信号」をリスト化して、自分のピンチサインを自覚しておくとよいかもしれません。ちょっと疲れた時・余裕がないときなどに自分がどんな状態になるか(「働けない程度ではない風邪気味になる」「ふだん気にならない同僚の口癖が癪に障り始める」など)の自己観察に基づくデータの蓄積。

わたしは小さなノートを一冊作って、調子悪い時のサイン集や、自分助けの対処法リストをまとめるようにしています。


2.これまで軽視してきた個人的ニーズに注目する

余裕なくて、部屋がゴミだらけ。
昼食は取れない時もあるし、夜はコンビニ弁当ばかり。
仕事中もまともに休憩時間取れてない。1日中動きっぱなし。
有給取る取る詐欺で、いつの間にか半年も有給取ってない。
しかも今月そういえば2日も休日出勤している。

自分自身へのケアがおろそかになっていないか。これまでおろそかにしてしまっていいたかもしれないけど、自分が必要としているものは何でしょうか。

3.休養、運動、健康的な食事など自分をいたわる養生をする

・ゆっくりすることを自分に許してあげる
・遠慮せずに堂々と有給をとる
・休憩時間まで仕事しないでゆっくりする
・休日は公園を散歩する
・今日は帰り焼き肉屋に行く
・温泉に行く
など。

どんなじぶんの「いたわりかた」「自分の助け方」があるでしょうか。(WRAPでは「元気に役立つ道具箱」という表現があります。このツールボックスのなかみは豊富でしょうか。ツールはよく使っていますか。それとも使わずさびついていますか)

4.個人的ニーズを満たすのに助けとなる個人的資源のネットワークを作る

これは、どちらかというと、ストレスがかさむかさまない以前の普段の段階から、意識して行っておくことが必要そうです。ピンチの時に急にネットワークを作るのは大変ですから。

・しがらみにとらわれず自由に話ができる仲間をつくる。例えば、趣味の仲間、町内会のご近所さんとの親睦、信仰を持っている人であれば信仰共同体(クリスチャンなら日曜日に行く教会など)などでしょうか。

・体調が悪いときに、子育てで面倒を見てくれる人、家事を手伝ってくれる人、など具体的なサポートを行ってくれる人なども、「個人的資源」にふくまれると思います

・また「理事会に働けてくれたり、状況の分析を手伝ってくれる人は特に役に立つ」とのことです。一人ではなかなか自分の状況が見えないことも多いものです。自分の状況を振り返る上で、話を聴いてくれる人が一人でもいるなら、幸せなことです。また、「理事会に働きかけてくれる」というのは、職場環境に問題がある際、その改善に向けて組織に訴え、援助してくれる人がいると助けになる、ということでしょう。

わたしの場合は、カウンセリングを一緒に学んでいる勉強仲間と話をする、フォーカシングの集まりに出かける、近所のお寺に瞑想しに行く…などでしょうか。

まとめ

対人援助職は、自分を道具として使う仕事とも言われます。いい仕事をする上では、道具の手入れをしなければなりません。

コヴィー氏の『7つの習慣』に「P/PCバランス」という考え方があります。
「P」とはproduct、成果のこと。

「PC」とはプロダクトを生み出す能力(capacity)のこと。

木を切って木材を得ること(P)を急ぐあまり、のこぎりの歯を手入れしなければ、どんどん切れ味(PC)が落ちて、結果として成果も下がってしまいます。かといって歯の手入ればかりしていても、成果を上げることはできません。PとPCのバランスをとることが大事です。援助職も、まさに同様で、このバランスを意識することが必要です。
そうしたバランスをとるためにも、上記の「ではどのように対処するか?」の1~4のステップは、ガイドラインとして役に立つかもしれません。

 

また、「援助の道具」である以前に、自分自身も「大切なひとりの人間」です。「人というものは尊い(人間尊重)」という認識が、援助職の援助の前提にあるものならば、ほかならぬ自分自身も人なのですから、同様に尊ばれ、大事にされねばなりません。


最後にバーンアウトへの事前の準備としてできそうなことをまとめておきます。
このあたりならだれでも、いつでも始められそうです。

① 「要注意信号」のデータ蓄積
「さいきん調子悪かったり、疲れていた時、じぶんはどんな様子だったかな」。
調子が悪い・余裕がなくなっているときの自分のサインを自己観察して、データを蓄積しておく(→そうするとストレスがかかっているとき、ストレスがかかっている現状に早く気が付きやすくなる)。

② 「自分の助け方」を豊かにする
「どんなことをしてあげるとじぶんは元気がでるかな」
普段気づかず行っている上手な「自分の助け方」を、まず思い出す。またほかの人の自分の助け方を学んだり(人に聞いたり本で読んだり)、新たに自分で開発して、蓄積する。この中には、ほかの人の手を借りる頼るという選択肢も含めて考える(→ストレスがかかっていることに気づいたときに、すぐに活用できる)

 

 

*1:ルイーズC.ジョンソン、ステファンJ.ヤンカ著 山辺朗子、岩間伸之訳